デンマークの住民登録制度

 ●デンマークの住民登録制度

 

デンマークの「住民登録」制度は1924314日付け「住民登録に関する法津」(法津第57号)によって導入されました。この「住民登録」制度の導入目的は市町村の人口を把握するためでした。これ以前は教会が住民の登録をしていたようです。そして、デンマークの住民登録では、例えば、禁治産者や破産、刑罰暦の登録(1956年に登録廃止)、納税登録(1962年廃止)、貧困救済金受給暦(1962年登録廃止)などの個人情報を数多く登録していました。 そして今日の制度が導入された後においても、例えば、国民及び障害年金登録(1973年登録廃止)選挙権暦、国民保健暦(1973年登録廃止)など個人情報を登録していましたが、時代と共に登録項目を削減し、今日CPRに登録されている項目は、名前、住所の他家族構成(既婚、15歳以上単身)など、投票に必要な個人情報、その他移転・死亡などの項目のみとなっています。

 

 

 

デンマークの「中央個人登録」制度は、1967年、「セントラルパーソナルレジスター」(CPR。3月28日内務省通達第40号)が基になり、翌68年に内務省通達第206号によって「個人登録番号証明書」が発効されるようになりました。デンマークの個人登録番号制度では、観光以外の目的でデンマークに入国し、デンマーク政府から滞在許可証を取得した全ての人達に住民登録が義務付けられています。滞在許可が切れ、出国しなければならない時は移転(帰国)届けを住民登録所に通報することになっています。それによって、その人はデンマークに滞在していないことが確認できるからです。なお住居地の移転者は移転した日から5日以内に移転先の市町村役場に届ける義務を負い、怠った場合は罰せられることになっています住民登録の個人情報の保管機関は市町村で国家の保管ではありません。

 

 

 

デンマークでは個人登録をしないと、銀行に口座が開けないこと、正規の仕事に就けないこと、健康保険証が支給されないことなど、長期間生活を続けることはできません。なぜならば、個人登録番号は納税、年金・給与・会社登録、不動産購入や売却、就学、自動車の免許書、図書の借り出しなどあらゆる社会生活の場面で利用されているためです。例えば銀行口座の管理に関しては、その本人でない限り(或いはその本人から代理権と受けた人では無い限り)お金の引き出しは出来ません。

 

 

 

デンマークでは、15歳から所得に確定申告が始まり生きている限り毎年確定申告が国民に郵送されてきます。また、銀行に口座を持つ人達には銀行にもよりますが、3ヶ月に1度の割り合いで、口座残高の通知を送ってきます。その他、年金所得者の年齢に達すると市役所から文書が送られて来ます。もし、これらの郵便物が住所不明で送り人に戻った場合、銀行にしても

 

役所にしても、その本人の居住地の確認に入ります。 それとデンマークでは、家族の誕生日会、結婚祝い、銅婚式、銀婚式、金婚式、ダイヤモンド式、その他本人の40歳、50歳、60歳以降も含め、兄弟姉妹、子どもや孫を招待しての誕生日会を開催しています。それとまた、

 

買い物、掃除、洗濯、着替えや入浴など日常生活に不自由をしている、特に高齢者には、行政から無料での在宅介護スタッフが配属されます。その他、高齢者の話相手や散歩を手伝うボランテアーの人たちが何処の田舎町に行っても必ずいます。そういうことで、何年も誰にも知られず生きることはデンマークでは困難だと思います。そんなことから、日本においては何年間も高齢者が生存の確認が出来ないでいる、と云ったことはデンマークでは考えられないことだと思っています。ましては、『100歳以上でまだ生きていることにして、年金をもらっていたということもあるようです。』においては、デンマークでは出来ません。なぜならば、年金はその本人の口座(個人登録番号によってのみ開設出来る)払い込まれるためです。それと100歳を越えるデンマーク人の殆どは、在宅介護を受けるか、それとも、介護センターに収容されているため、「生きていることにする」ことは出来ないためです。

 

 

 

デンマークの個人登録番号については出生した日から数えてコペンハーゲン市では2日以内に、地方都市では8日以内に所轄の教会に届けることになっていましたが、最近は出産直後病院が中央個人登録所に通知し、母子が退院する前に個人番号を伝えるようにしています。洗礼前の子どもには名前が付いていないため通常父親の姓で届け出し、婚外子の場合は母親の姓で届け出ます。 登録番号は10桁の数字で、生年月日と性別で完全に個人が判別できるようになっています。例えば、「230670-1234」という個人登録番号は、最初の6桁が生年月日で1970年6月30日に生まれ、残りの四桁は通し番号、最後の数字が偶数は女性・奇数男性で性別を表わします。デンマークの個人登録番号は同姓同名による、各種の諸問題を解決する上で最適な制度だと思えます。なぜならば、この個人登録番号はその本人以外に誰も同じ番号を共有していないためです。税部署は個人登録番号で過去5ヵ年の納税状況が把握でき、警察は個人登録番号で犯罪暦がチェックできるし、医療関係者は個人登録番号でその人の入院暦や往診暦が確認できるためです。

 

 

 

 ●健康保険証も兼ねたカード

 

 デンマークの「個人登録番号証明書」はプラスチック製のクレジット大のカードですが、健康保険証も兼ねています。カードには、個人登録番号、本人の姓名と住所、家庭医者の名前と電話番号が記載されています。そしてこの健康保険証は図書館で本を借りる時の自動貸し出し機械にも適用できます。また、国外での休暇中の疾病による治療や入院にも使えるように、カードの裏側にはデンマーク健康保険庁が英文で「デンマークの健康保険法の規定に基づき休暇中における医療費の負担をすること、重病や死亡の場合は通告ありたい」と書かれ、連絡先となるデンマーク健康保険庁の電話番号とファックス番号が記載されています。

 

 医療機関を受診する際には健康保険証として、この「個人登録番号証明書」を提示します。

 

 

 

 ●社会生活のあるゆる場面で提示する

 

 「個人登録番号証明書」カードは、「ゆりかごから墓場まで」の過程で社会とのつながりを持つ時は必ず必要になってきます。結婚、出産、就学(試験成績の発表はCPRの場合が良くある)、就職、各種医療機関を利用する時、年金、葬儀など殆どで、多くに場合提示する必要がありませんが、聞かれた時に自分のCPRを伝える必要があります。

 

 

 

 ●脱税が困難な徴税システム

 

 個人番号は、お金の出入りの際、納税の際に、CPRが必ず必要となります。脱税は、正規の取引をしている人達には大変難しいことだと思います。何故ならば、デンマークの銀行は、年末、全ての口座所有者の残高を税務署に通知する制度が導入されているため、税務署は確定申告書に記載されている(CPR番号付き)収入源と銀行から送付されて来た 口座残高(CPR付き)容易に照合することが出来るためです。そしてデンマークの確定申告書の保管期間は5ヵ年で、税務署は5ヵ年間の間に個人・法人関係なく、納税額のチェックが出来るようになっているのです。そんなことから、確定申告書に記載しないお金を銀行に預けるわけには行かないためです。デンマークで脱税が難しいのは、年商1万クローネ以上(約20万円)事業主は消費税の登録が義務付けられ事業主には8桁のナンバーが配布されています。事業主間の取引においてはそのナンバーの記載が義務付けられ、また、会計報告の義務付けもあるためです。それでも、デンマークの脱税に関する、新聞報道によると(Jyllands-Posten 25/7 2009 s.5デンマークの税務署は1万人の確定申告書のチェックをした結果、通常の確定申告で男性で6パーセント、女性で4パーセント「脱税と記載ミス」見つかったと語り、複雑な確定申告では男性で16パーセント、女性で11パーセントに「脱税と記載ミス」があった」と書いています。つまり、個人番号の登録制度を導入し、脱税が難しいくなっているにも関わらず、それでも脱税したり、確定申告の記載にミスがあり、その結果、脱税に繋がるケースもあるようです。このことに関し、デンマークの税務署は、特に男性の確定申告書を厳しくチェックするとは云っておらず、確定申告書の記載への指導の強化に努めると云っているだけです。、この背景には、デンマークの消費税率は25%ですので、仮に所得税を脱税して得たお金でも、消費することで、国家の財源になっているためだと思うのです。例えば、2007年におけるデンマーク人の納税額は8、287億クローネ(約16.6兆円)ですが、この内の51.5パーセントが個人所得税による納税、21.3パーセントが、消費税による納税額となっています。つまり、デンマーク国家財政の歳入源となっている納税額の約73パーセントは個人所得税として納税されたお金と消費によって納税されたお金によって占められているのです。こういうことから、仮に所得税を脱税した人達でも、脱税したお金で、飲んだり、食べたりなど、をし、殆ど消費としてしますのでが、(何故ならば銀行に預けるわけには行かないため)、その消費を通し消費税として納税しているのです。(了)

 

 

 

         2010810日 ケンジ ステファン スズキ

 

 

 

*この原稿は、日本からの依頼に基づき書いたもので、依頼者の原稿依頼の意図は以下の理由です。

 

 

 

「今日本では、100歳以上の人の中に、住所も生存も、確認できない人が何十人かいて、その子供である、70台の人も、どこにいるか知らないという状況で、中には、親がなくなっているのに、100歳以上でまだ生きていることにして、年金をもらっていたということもあるようです。お役所も、100歳以上の人が、生きているとして、最高齢者としていたり、かなり、いい加減です。報道では、家族の絆が薄まっているとしていますが、また、お役所は、個人情報だから踏み込めないといったりしていますが、これは、日本が、個人番号で、管理されていないことからくる行政の失敗ではないかと思います。」(依頼者からの文書の抜粋)